ナチュロパシーとは?
What is Naturopathic Medicine?
自然医学(ナチュロパシー)は、身体が本来持っている自然治癒力を使って健康を保ち、病気を治そうとする医学です。
「ナチュロパシー」と言う言葉は、19世紀の末、米国に移住したドイツ出身の医師、ベネディクト・ルスト(1872年~1945年)がニューヨーク市に「アメリカ・ナチュロパシー・スクール」を開設してから広まりました。
しかし、身体に自然治癒力があるという考え自体の歴史は非常に古く、数千年前のインド医学(アーユルベーダ)、中国医学、ギリシャ医学(ヒポクラテス医学)などにも見られます。もちろん、現代の西洋医学においても、究極的には自然治癒力に頼っているのですが、18世紀から19世紀の中ごろまでは「英雄医学」の時代で、瀉血(しゃけつ:ランセットという針で静脈を切って出血させる治療法)などの乱暴な治療法により、随分と患者を死亡させたと言われております。こうした英雄医学に対する疑問から生まれた医学の流れの一つに、ナチュロパシーがあるのです。
ナチュロパシーの医師は、食餌療法、臨床栄養学、生活の仕方(ライフスタイル)の指導、ホメオパシー、鍼治療、薬草療法、水療法、運動療法、マッサージ、電気治療、超音波療法、光療法、カウンセリング、薬物療法などを組み合わせて治癒に導きます。しかし、忘れてならないのは、ルストの「健康への道は清浄で簡素な生活である」という哲学そのものかもしれません。世界保健機構(WHO)も、通常の医学とナチュロパシーの統合を勧めております。

自然医学の6つの原則
The 6 Principles of Naturopathic Medicine
身体には自然治癒力がある
身体には本来、健康を維持したり、病気を治したりする力が備わっています。治療家の役目は、この力を、自然な食事や害の無い治療法でうまく引き出したり、治癒を阻害しているものを取り除いてやることにあります。
原因を治療せよ
自然医学の治療家は、症状を抑さえるよりも、その裏にある病気の原因を見つけようとします。症状自体は病気というよりは、身体が病気を治そうという時の反応であることが多く、症状だけを抑さえようという治療法は、必ずしも正しいものではありません。例えば、風邪の時の発熱は、ウイルスを殺すために必要な生体反応ですので、あわてて解熱剤を用いることは、結局は治癒を遅らせることになります。病気の原因は、肉体的、精神的 、感情的 、霊的なレベルで健康状態に影響を与えます。そのため、通常の医学に対する知識だけでなく、人間についての理解を深め続けなくてはなりません。
まず害を与えないこと
症状は、身体が病気を治すときの反応であるので、原因を治療せずに症状だけを抑さえるような治療法は危険な場合が多く勧められません。自然医学の治療家は、まず安全で有効な治療法は何か、ということを考えなければなりません。これは古代ギリシャの医聖ヒポクラティスの教えでもあります。
まるごとの人間を治療せよ
一人一人の人間は、肉体、精神、感情、魂の統合体でり、人間は遺伝的、自然的、家庭的、社会的、歴史的存在でもあります。これらの様々な要素が、複雑に関係しあいながら、健康と病の間を揺れ動いてます。治療者はできるだけ多くの視点でものを見て、それらを統合する訓練が必要です。
治療家は教師となれ
治療家は正しい診断と治療を行なうだけでなく、患者と健康的で、生き生きとした関係を築く必要があります。患者と治療家との協力関係があってこそ、本来の治療効果が出てきます。治療家の本来の役目は、患者自らが気づき、健康な習慣へと自己改革できるように、教え導くことにあります。分子矯正医学の医師、R.カニンは以下の3つの治療基準を設けています。
- 患者に病気を説明する。
- 病気にどう対処すべきかの指示を与える。
- 患者に自分でも責任をもって自己管理に努めるように促す。
以上の考え方は、自然医学の治療家の義務でもあります。
予防は最良の治療法である
ヘルスケアの最終目標は、予防です。治療家は健康な生活習慣保つような教育を通して、疾患の予防を行なわなければなりません。よく、「攻撃は最大の防御である」と言われますが、「健康促進は、疾患治療に勝る」と言うのも事実です。

自然医学の治療法
Naturopathic Treatment
臨床栄養学
食事を治療に使用するのは、自然医学の基本です。健康的な食事と適切な栄養補助食品が、疾患の予防と治療に有効であるということは、最近の疫学的、生化学的、臨床的な研究で明かにされつつあります。
薬草医学
植物を治療に使うという方法は、太古の昔から用いられて来ました。現代西洋医学の医薬品の中にも、植物から発見されたものが非常に多くあります。しかし、従来の西洋医学の発想が、単一の有効成分を抽出するというものであったため、その医薬品は単一の目的で使われることが多くなってしまいました。これに対して、ハーブや漢方薬は一種類がいろいろな目的に使用できます。
ホメオパシー
「Homeopathy (ホメオパシー)」と言う言葉は、ギリシャ語の「homoios(似ているという意味)」から来ています。ドイツの医師ハーネマン(1755年~1843年)により創られた医学で、やはり当時の「英雄医学」に対する疑問から生まれました。この医学の治療法は、「類は類を治す」というものであります。これはハーネマンの、「健康な人に、ある症状を起こす物質は、それと似た症状の病人を治すことができる」という経験から生まれた考え方です。ホメオパシーの薬は様々な植物、鉱物、化学物質から造られており、「希釈されればされるほど強力である」という考え方は、現代の物理化学的常識との間でしばしば論争を生んでいます。
鍼灸療法
中国医学やインド医学では、身体には生体エネルギーの「気」が流れていると考えています。この気の流れる道が「経絡」と呼ばれるもので、経絡上には多くの経穴(いわゆるツボ)があり、そこで気の流れ方が変化します。経絡は身体の内部器官と繋がっているために、経穴に刺激を与えて気の流れを変えることにより、内臓を調節できるとされています。経穴の刺激法には、鍼、灸、指圧などを用います。
理学療法
運動療法、筋肉のマッサージ、背骨や関節の調節などを用いる治療法です。また、超音波や遠赤外線、干渉波、低周波、光線を使用したりもします。血液循環、気の流れ、体液の流れを調節するという意味があります。
水療法
水を病気や怪我の治療に使うのは、世界各地の様々な文化で見られます。水療法では、様々な温度の水(温水、冷水)、様々な状態の水(氷、液体、水蒸気)、様々な方法(温泉、腰浴、サウナ、シャワー、プール、足浴、浣腸等々)が用いられています。現代の自然療法医の開祖とも言うべきベネディクト・ルストは、オーストリアの神父セバスチャン・クナイプ(1821年~1897年)式の水療法に注目してアメリカに広めました。クナイプは致命的だと言われた自分の肺病を、何ヵ月も欠かさず毎日氷水の中に身を浸して治したといいます。
カウンセリングとライフスタイル変容
精神の態度、感情や気持ちが健康や病気に影響することは、昔から経験的に分かっていました。このことは、現代医学でも、「精神神経免疫学」という学問で明らかにされつつあります。しかし、科学は物質と物質の関係を調べる学問ですので、精神と免疫の関係の全容は当分明らかにならないでしょう。大切なことは、積極的な精神態度を保つことです。また、本心良心に沿った生活をするような自己訓練も必要でしょう。ベネディクト・ルストは、「死因の大半は誤った生き方と薬だ」と言っています。医師と患者は、お互いに学び成長しなければならないでしょう。


